「新しい家具を買って部屋をおしゃれにしたい!」
そう思ってネットで注文した家具。しかし、いざ届いてみると玄関を埋め尽くす巨大な段ボール、ズッシリとした重さ、そして開けた瞬間に絶望するような大量のネジとパーツ……。
私たち「家具組み立て代行業者」のもとには、毎日のように「自分でやろうと思ったけれど、途中で挫折した」「説明書が理解できない」というSOSが届きます。

家具のデザインや価格はチェックしても、「組み立てやすさ」をチェックしてから購入する人は意外と少ないものです。しかし、メーカーによって組み立ての難易度は天と地ほどの差があります。
この記事では、年間200件以上の家具を組み立てている当店の視点から、主要メーカー別の組み立て難易度を5段階で評価し、その理由やメリット・デメリットを徹底解説します。購入ボタンを押す前の「最終確認」としてご活用ください。
1. なぜ「組み立て難易度」を知る必要があるのか?

家具選びにおいて、サイズやデザイン、価格は誰もが気にします。しかし、「誰がどうやって組み立てるか」は、届いた後に初めて直面する問題です。
難易度が高い家具を安易に購入すると、以下のようなリスクが発生します。
- 時間的コスト:
プロなら1時間で終わる作業に、初心者が半日〜1日費やすことも珍しくありません。 - 怪我のリスク:
慣れない重量物の扱いや工具の使用で、腰を痛めたり手を怪我したりする事故が多いです。 - 家具の破損:
無理やりネジを締め込んだり、手順を間違えて分解不可能になったりして、新品の家具を台無しにしてしまうケースです。 - 部屋の損傷:
組み立てスペースが足りず、床や壁にパーツをぶつけて傷をつけてしまうトラブルです。
「安く買ったはずなのに、結局高くついた」とならないために、メーカーごとの特徴を知っておくことは非常に重要なのです。
2. 【難易度:★★★★★】IKEA(イケア)

難易度レベル:MAX(プロでも気合が必要)
おしゃれで安く、機能的な北欧家具の代表格。しかし、組み立て業界においてIKEAは「ラスボス」的存在です。
なぜそんなに難しいのか?
IKEAの家具が難しい理由は、大きく分けて3つあります。
- 説明書に文字がない(イラストのみ)
IKEAは世界中で販売されているため、説明書は言語に依存しないイラストのみで構成されています。「ここで向きに注意」「仮止めにする」といった親切な日本語の注釈はありません。イラストの微妙なニュアンスを読み取る「読解力」と「空間認識能力」が求められます。 - パーツ数が圧倒的に多い
特に収納家具(PAXシリーズなど)やベッド(HEMNESなど)は、ネジや木ダボ(木の棒)の数が膨大です。1つの工程を間違えると、数十手前まで戻らなければならないこともあります。 - 日本の住宅事情を考慮していない重量とサイズ
広い欧米の住宅で組み立てることを前提としているため、組み立て途中で家具をひっくり返したり、横に倒したりする広大なスペースが必要です。また、使用されているパーティクルボード(木材チップを固めた板)は密度が高く、非常に重いです。ただ、重たいという事は「しっかりとした素材だ」という事なので、決して悪口ではありませんので。
メリットとデメリット
- メリット:
- デザイン性が高く、部屋が一気におしゃれになる。
- カスタマイズ性が高く、自分好みの収納を作れる。
- 価格に対して部材が頑丈(一度組み上がれば丈夫)。
- デメリット:
- 電動工具(インパクトドライバー等)がないと手が大変な場合がある。
- 「バックパネルの釘打ち」など、失敗すると取り返しがつかない工程がある。
- 解体を前提としていないため、引越しの際に業者が運搬を拒否することがある。
プロからのアドバイス:
IKEAの大型家具(ワードローブ、大型ベッド、壁面収納)を買うなら、最初から組み立てサービスを予算に入れておくのが賢明です。正直、素人の方には難易度が非常に高いです。
3. 【難易度:★★★★☆】LOWYA・モダンデコ(ネット通販系)

難易度レベル:高(体力と根気が必要)
近年、Instagramなどで大人気のLOWYAやモダンデコ。トレンドを押さえたデザイン家具が驚きの低価格で手に入りますが、組み立てには覚悟が必要です。
デザイン重視の裏側にある「重さ」
これらのメーカーの家具は、見栄えを良くするために複雑な構造をしていることが多いです。また、コストを抑えつつ強度を出すために、非常に重い集成材を使用しています。
特に「引き出し付きのテレビボード」や「キッチンカウンター」は要注意です。レールを取り付ける作業が多く、板一枚一枚が重いため、女性一人での組み立ては危険を伴います。
梱包と説明書の落とし穴
- 発泡スチロールの嵐:
輸送中の破損を防ぐため、非常にもろい発泡スチロールが大量に使われています。箱を開けた瞬間に静電気で部屋中に粒が散乱し、掃除だけで30分かかることも。 - 説明書の不親切さ:
IKEAほどではありませんが、説明書の図が小さかったり、部品番号がわかりにくかったりする部分もあります。また、似たようなネジが多く、間違えやすいので気を付ける必要があります。
メリットとデメリット
- メリット:
- トレンドのデザインが格安で手に入る。
- 完成した時の見栄えは価格以上。
- デメリット:
- とにかく重い。大型家具は玄関から設置場所まで運ぶだけで一苦労。
- 部品点数が多く、作業時間が3〜4時間かかることもザラ。
- ゴミ(段ボールと発泡スチロール)の量が多い。
プロからのアドバイス:
電動ドライバーは必須です。また、床を傷つけないように、毛布や段ボールを広く敷いて作業スペースを確保してください。
4. 【難易度:★★★☆☆】ニトリ(NITORI)

難易度レベル:中(日本人に優しい設計)
「お、ねだん以上。」でおなじみのニトリ。日本のメーカーらしく、消費者のことを考えた設計になっています。
日本語マニュアルの安心感
ニトリの最大のアドバンテージは「説明書のわかりやすさ」です。丁寧な日本語で書かれており、「ここでしっかりと締める」「向きに注意」といったアドバイスが記載されています。
また、ネジなどのパーツが入った袋には、説明書の工程に対応した番号やアルファベットが大きく振られていることが多く、部品探しで迷う時間が短縮されます。
それでも油断できないシリーズとは
基本的には親切設計ですが、大型の「Nクリック」以外の収納棚や、システムベッドなどは部品点数が多く、難易度が上がります。また、低価格帯のカラーボックスなどはネジ穴が硬い場合があり、手の力だけでは締めきれないこともあります。
メリットとデメリット
- メリット:
- 説明書が親切で、初心者でも理解しやすい。
- 不良品があった場合のサポート対応が迅速で安心(店舗持ち込みも可能)。
- 「簡単組み立て」シリーズ(Nクリックなど)は本当に簡単。
- デメリット:
- 大型家具はやはり重く、二人作業が必須。
- 一部の安価なシリーズは、ネジ穴の精度が甘いことがある。
プロからのアドバイス:
ニトリの家具は、DIY初心者におすすめです。ただし、システムデスクやロフトベッドなどの大型商品は、無理せず配送員による組み立て設置サービス(有料)を利用したほうが良いでしょう。
5. 【難易度:★★☆☆☆】無印良品(MUJI)

難易度レベル:低〜中(シンプルで合理的)
無印良品の家具は、デザイン同様に構造もシンプルです。
シンプルイズベストの真骨頂
無印良品の家具は、無駄な装飾がない分、パーツ点数が最小限に抑えられています。スタッキングシェルフやユニットシェルフなどは、構造が単純で直感的に組み立てられるように設計されています。
プロが評価する構造の良さ
金具の精度が高く、ネジがスムーズに入っていきます。「穴がズレていて入らない」というストレスが非常に少ないのが特徴です。付属の工具も、簡易的ながら使いやすいものが同梱されていることが多いです。
メリットとデメリット
- メリット:
- 構造がシンプルで工程が少ない。
- 精度が高く、力任せにねじ込む必要がない。
- 引越し時の解体・再組み立てが比較的容易。
- デメリット:
- 木製ベッドや大型のステンレスユニットシェルフは、重量があるため一人では危険。
- 価格帯はニトリやIKEAより高め。
プロからのアドバイス:
初めて家具組み立てに挑戦するなら、無印良品のスタッキングシェルフなどが練習台として最適です。失敗するリスクが最も低いメーカーの一つです。
6. 【難易度:判定不能(運次第)】Amazon・楽天の格安輸入家具

難易度レベル:運(★〜★★★★★)
ブランド名があまり知られていない、中国製などの格安輸入家具。これは「ギャンブル」の要素を含みます。
「安さ」の代償とは
ネット上の写真では立派に見えても、届いてみると「説明書が中国語のみ」「ネジ穴が貫通していない」「パーツが足りない」といったトラブルが発生する確率が最も高いカテゴリーです。
私たちプロでも、電動ドリルで新しい穴を開け直したり、ホームセンターで代わりのネジを買ってきたりと、臨機応変な「加工技術」を求められることがあります。
よくあるトラブル事例
- カムロック(留め具)が割れる:
金属の強度が低く、締めている途中で破損する。 - 板の角が潰れている:
梱包が薄く、配送中にダメージを受けている。 - 破損・キズ:
開梱して取り出した時点で破損やキズがある。
プロからのアドバイス:
DIYに自信がない限り、レビューを入念にチェックし、「組み立てが大変だった」「穴がズレていた」という報告が多い商品は避けるのが無難です。これらの家具の組み立て代行は、追加加工賃がかかる場合もあります。
7. 自力で組み立てる際のリスクと覚悟
どのメーカーの家具であっても、自力で組み立てる場合は以下の準備が必要です。
必要な工具
付属の小さなスパナやドライバーだけで大型家具を組み立てるのは、手の皮が剥ける苦行です。最低限、以下を用意しましょう。
- ラバーグリップ付きドライバー:
100均のものではなく、ホームセンターで売っているしっかり握れるもの。 - ゴムハンマー:
パーツを嵌め込む際、傷をつけずに叩くために必須。 - 電動ドライバー:
あると作業時間が半分以下になります。ただし、パワーが強すぎると板を割るため注意が必要。
「二人以上で組み立ててください」は絶対
説明書にこの記載があったら、絶対に守ってください。これは「大変だから」ではなく、「構造上、支える人と留める人が必要だから」です。一人で無理に行うと、接続部分に負荷がかかり、板が割れたり(「メキッ」という音と共に)、未完成の家具の下敷きになったりします。
8. プロに依頼すべき家具・自分でできる家具の境界線
ご自身でやるか、我々のような業者に頼むか。迷った時の判断基準をまとめました。
【自分でやってもOK(難易度低)】
- カラーボックス(3段程度)
- 無印良品のポリプロピレンケース
- 脚を取り付けるだけのテーブル
- ニトリのNクリックシリーズ
【プロへの依頼を強く推奨(難易度高・リスク大)】
- システムベッド・2段ベッド:
ネジの締め忘れやサイズを間違えたままで使用していると大変危険ですので、専門業者へ依頼するべきです。 - IKEAのPAX(ワードローブ):
垂直に立てて組み立てる際、天井高ギリギリの作業が必要。フレームが歪むと扉が閉まらない。一般の方での組立ては、ほぼ無理です。 - 跳ね上げ式収納ベッド:
ガス圧ダンパーの取り付けが非常に危険かつ複雑。 - 引き出しが3つ以上あるチェスト:
レールの取り付け位置が1mmズレると引き出しが干渉する。 - スライドドア(引き戸)の家具:
水平調整がシビアで、素人が組むと隙間ができたり勝手に開いたりする。 - 高さ180cmを超える壁面収納:
転倒防止対策も含め、プロの固定技術が必要。
9. まとめ:快適な家具生活をスタートさせるために
家具は「買って終わり」ではなく、「組み上がって初めて完成」するものです。
「節約のために自分で組み立てよう」と始めたものの、週末を丸一日潰し、筋肉痛になり、完成した家具はなんだかガタついている……そんな悲しい結末を迎えないために、ご自身のスキルと家具の難易度を天秤にかけてみてください。
「この家具、自分には難しそうだな」「道具もないし、時間もないな」と感じたら、無理せずプロを頼ってください。
私たちは、単にネジを締めるだけでなく、ダンボールの開梱からゴミの回収、床の保護、そして長く安全に使うための微調整まで、全てを請け負います。






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